著者:ジェイムズ・P・ホーガン
訳:池 央耿
出版社:東京創元社
1980年5月23日初版
高校を卒業したくらいにたまたま立ち寄った本屋で表紙のカッコ良さに惹かれてしまい、思わず購入した小説。読み終わってから気付いて驚いたのが、自分が生まれる前に書かれた古いSF小説であったこと!
ジャケ買いをしてしまったわけだが、未だに忘れることの出来ない衝撃の出会いだったので、思い出せる範囲で紹介したいと思う。
IDCC(分析装置メーカーで原子核物理学研究所等も有する世界的企業)の理論物理研究員ヴィクター・ハントはある日突然、取締役からIDCC本社へ飛ぶように命ぜられる。
赴いた先で待っていた国連宇宙軍(UNSA)航行通信局本部長グレッグ・コールドウェルから、月面のある洞窟から見つかった遺体について聞かされる。
遺体で見つかった人物は、どこの月面基地にも所属しておらず正体不明の為、取りあえずチャーリーと呼ばれていた。
たった一人のチャーリーの身元を調べる為にUNSAが何故世界的企業のIDCCに技術提供を求め、物理学者のハントや生物学者のクリスチャン・ダンチェッカーという世界に名だたる科学者を招集して調査チームを組んだのか、コールドウェルの一言にそれが凝集していると言ってもいいだろう。
「何者であるかはともかく・・・・チャーリーは5万年以上前に死んでいるのです」
SF好きでなくても、このセリフだけで物語に強く引き込まれてしまうのではないだろうか?
やがてチャーリーの科学的分析の他に持ち物の中の手記等の解読が進むにつれて、チャーリーが属していた社会の様子や、死ぬ間際のチャーリーの壮絶な境遇が分かり始める!
そしてこの物語のクライマックスは、ルナリアン(月で最初に見つかったので、チャーリーの属する人種をこう呼んでいる)の真相解明を祝うパーティーの席上で突如始まるダンチェッカーの大演説である。
ダンチェッカーはチャーリーの真相解明からさらに踏み込み、それまでに解明された事柄から導かれる唯一の論理的帰結を確信していた!
そこで聴衆にこう言い放つ、
「私は、この考えを何の矛盾もなく完璧に裏付ける論旨によって人類の起源を説明する自信がある」
ここでとうとうルナリアンと人類との関係、人類のミッシングリンクの謎、すなわち人類の祖先が歩んできた進化の歴史が明かされる!
本著はミステリーの要素もあるので、もしかしたらこれから読む人も居ると思われるので紹介はこれぐらいにしておきたいと思う。
SF小説の中でも古典とも言える、長らく読み継がれてきた名作なのでこの記事を見て興味を持って頂けたら幸いである。